頚椎症とはどんな病気?|症状や原因について解説
脊椎センター長監修記事
大島功生
池袋西口病院脊椎センター長/日本整形外科学会専門医/日本脊椎脊髄病学会指導医
池袋西口病院では脊椎手術に特化した(池袋西口病院脊椎センター)を運営しています。その施設の責任者である大島功生医師監修の下、リハビリテーションや脊椎疾患、手術術式についても寄稿していきます。
頚椎症(けいついしょう)は、10代から80代まで幅広い年齢層に見られる整形外科的な疾患の一種で、椎間板の変性度合いによってさまざまな症状があらわれます。今回は頚椎症の原因や症状、および治療方法について解説します。
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【目次】
■頚椎症とは?
■頚椎症の原因と症状
■どうやったら治る?頚椎症の治療方法
■まとめ:気になった人は病院で受診を!
頚椎症とは?
頚椎(首の骨)は7つの椎体で構成されており、椎体と椎体の間には椎間板がありクッションとしては役目をはたしています。
椎間板は20代になると次第に変性(老化)が始まり、つぶれたりヒビが入ったりすることでさまざまな症状を引き起こします。
頚椎症は大きく頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症の2つに分類されますが、後者は歩行障害や排尿・排便障害など重篤な症状を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
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頚椎症の原因と症状
頚椎症は幅広い年代に見られる疾患ですが、実際に加療が必要となるのは10万人当たり数人程度とそれほど多くはありません。まずは頚椎症の発症原因および主な症状について知っておきましょう。
こんな人は要注意!頚椎症の原因
頚椎症は首への負荷により椎間板が摩耗したり損傷したりすることで発症リスクが増加します。頚椎症の発症リスクを増加させる主な原因としては以下の点があげられます。
✓姿勢が悪い人
✓デスクワーク
✓重い物を持つ
✓うつぶせで寝る
✓長時間のスマホ
頚椎はもともと緩やかなカーブ(頚椎アーチ)を描いており、頭の重さによる首への負荷を緩和する構造となっています。
しかし、頚椎が前に10度傾くと首にかかる負荷が1.5倍に、30度傾くと首にかかる負荷が3倍に跳ね上がります。デスクワーカーや中高年以降の方に頚椎症が多く見られるのも、不良姿勢により顔の位置が前に出る傾向があるためです。
頚椎症の症状
頚椎症の症状や首だけでなく肩や肩甲骨、腕、指先に見られるほか、重症例では下半身症状があらわれるケースもあります。頚椎症の主な症状としては以下の例があげられます。
✓手や腕のしびれ、痛み
✓細かい指先の動きが鈍くなる
✓握力の低下
✓両足のしびれ、足の裏の違和感
✓歩行障害
✓尿が出にくい、尿が漏れる、便秘
ここでは、頚椎症の症状について解説します。
手や腕のしびれ、痛み
頚椎症性神経根症の場合は首から肩、腕にかけての痛みやしびれ、動作時や起床時の首の痛みなど、肩こりや寝違えに似たような症状が見られます。
発症の初期には指先にしびれが見られますが、症状の進行にともない腕や肩などにもしびれが出やすくなります。脳梗塞や手根管症候群など、しびれを引き起こす疾患との鑑別が重要です。
細かい指先の動きが鈍くなる
頚椎症を発症すると、手に力が入りにくくなる方もいます。特に頚椎症性脊髄症を発症した場合、巧緻障害を引き起こすリスクが増加します。巧緻障害の具体例は以下の通りです。
✓裁縫針に糸を通しにくくなる
✓シャツのボタンを留めにくくなる
✓ボールペンなどをもって字を書きづらくなる
✓お箸を使いづらくなる
上記の症状が見られる場合、重篤な症状を引き起こす前兆の可能性もあるため注意が必要です。
握力の低下
頚椎症性脊髄症の発症にともない感覚神経だけでなく運動神経にも障害が生じると、握力の低下を引き起こしたり、腕を上にあげつらくなったりといったトラブルも出やすくなります。
握力が10㎏以下にまで低下すると、日常生活におけるちょっとした動作にも支障を来すようになるため、手術療法の改善が検討されます。
両足のしびれ、足の裏の違和感
頚椎症性脊髄症を発症すると、足のしびれや足裏の違和感を生じやすくなります。最初は正座をした後のようなしびれが見られますが、症状の進行とともに足の裏が地面に降れていないような違和感を生じやすくなります。
若い方の場合は走りにくくなったり、片足立ちがしづらくなったりすることで症状に気づくケースもありますが、高齢の方だと発症に気づきにくいケースも多いため注意が必要です。
足のしびれや感覚の鈍麻を放置した場合、転倒の衝撃でより深いダメージが脊髄に加わり、下記で紹介する歩行障害を引き起こす可能性もあります。
歩行障害
頚椎症性脊髄症の発症にともなって足のしびれや感覚鈍麻、下肢の筋力低下などが起こった場合、転倒のリスクが増大します。
通常であれば軽いけがをする程度の転倒であっても、頚椎症を発症している方の場合は四肢のマヒを引き起こす可能性があるため注意しましょう。
尿が出にくい、尿が漏れる、便秘
頚椎症の発症にともなって脊髄(中枢神経)にまでダメージが及ぶと、排尿障害や便秘を引き起こす可能性もあります。
排尿障害を引き起こすと夜間に目覚めて何度もトイレに行くようになるなど、睡眠の質を低下させる恐れもあります。
どうやったら治る?頚椎症の治療方法
一口に頚椎症と言っても肩こりや手のしびれから歩行障害まで、実にさまざまな症状があらわれます。頚椎症の発症が疑われる場合には、主に以下の治療がおこなわれます。
✓保存療法
✓手術療法
頚椎症の治療方法について解説します。
保存療法
頚椎症にともない歩行障害や排尿・排便障害など重篤な症状が見られるケースを除き、まずは保存療法での改善を図ることが一般的です。代表的な治療法は以下の4つです。
✓装具療法
✓薬物療法
✓理学療法(リハビリ)
✓ブロック注射
頚椎症に対しておこなわれる2つの治療法について解説します。
装具療法
頚椎症の多くは首にかかる負担の蓄積によって発症するため、動作にともない痛みやしびれの増幅が見られるような場合は頚椎カラーで固定して動きを制限する治療法が採られます。
ただし、あまりにも長期にわたり頚椎カラーで固定した場合、周囲の筋肉が拘縮してかえって症状の悪化を招く可能性があるため注意が必要です。
薬物療法
頚椎症に対しては薬物療法もおこなわれます。痛みの緩和には非ステロイド性消炎鎮痛薬が、しびれの解消にはビタミン剤などが処方されます。また、首まわりの筋緊張によって痛みやしびれが生じている場合には、筋弛緩薬が処方されることもあります。
理学療法(リハビリ)
頚椎症を発症した場合、理学療法(リハビリ)で症状の改善を図るケースも少なくありません。理学療法(リハビリ)は首まわりの筋緊張を緩和し、頚椎への負担を緩和する目的でおこなわれます。
ブロック注射
上記の治療で症状の改善が見られない場合には、ブロック注射をおこなうケースもあります。神経圧迫を起こしている箇所に局所麻酔薬などを注入することで痛みの伝達をブロックする点が特徴です。
手術療法
保存療法で症状の改善が見られない場合や、歩行障害や排尿・排便障害により日常生活に支障を来すような場合には、手術療法が検討されます。
手術療法は大きく首の前方からアプローチする前方除圧固定術と、首の後方からアプローチする後方除圧術の2つに分類されます。
まとめ:気になった人は病院で受診を!
頚椎症は大きく、頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症の2つに分類されます。頚椎症性神経根症は筋緊張や不良姿勢によりもたらされることも多いため、日常の生活習慣を見直したり、適切な保存療法を受けたりすることで改善が期待できるケースもあります。
頚椎症性脊髄症は脊髄(中枢神経)が圧迫される病気のため、首や手だけでなく下半身にも症状がおよぶことがあります。可能な限り手術のリスクを避けるためにも、手の痛みやしびれがあるときにはなるべく早めに専門の医療機関を受診しましょう。
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