超音波検査

超音波検査とは

超音波は人間の耳には聞こえない高い周波数の音波で、一定方向に強く放射され直進性が高いという性質があります。これを利用して腹部に超音波を発信し、そこから返ってくるエコー(反射波)を受信し、コンピュータ処理で画像化して診断するのが腹部超音波検査(腹部エコー)です。
組織の組成によってそれぞれ基本的なパターンがありますが、腫瘍、ポリープ、炎症、結石などは周囲の正常な組織と組成が異なるため、超音波画像では、正常な組織との境界にコントラストが生じます。そのコントラストから、異常が生じていることを見つけ出すのです。
超音波検査では、腫瘍などの有無だけでなく、その大きさや病変の深達度(どのくらいの深さまで達しているか)も調べることができます。また、映し出される画像は、臓器がリアルタイムで動いて見えます。そのため、検査のための組織を採取したり、臓器の位置を確認しながら治療を行うときに使われることもあります。
さらに、この検査はX線検査のように放射線被爆の心配がなく、検査を受ける人の苦痛もなく安全なため、産婦人科では胎児の診察にも用いられています。

腹部エコー

腹部エコーで分かる主な病気

腹部エコー

各臓器の腫瘍(良・悪性)結石の有無、急・慢性の炎症。
なかでも胆石、早期肝臓がんの発見に有用です。胆石は、何らかの症状を認めずに、検診で初めて指摘される場合も多く、保有者の約10%は生涯、無症状で経過するといわれています。
また、C型肝炎ウイルスが主な原因となっている慢性肝炎は、肝硬変や肝臓がんに移行する確率が高いので、定期的な検査で早期の変化をとらえるために、この検査が頻用されています。

腹部エコーはどのように行うのか

腹部エコー

腹部を十分に広く出すため、上着は胸の下くらいまで上げ、ズボンやスカートは腰骨の下くらいまで下げます。
検査台に仰向けに寝て、両手を頭の方にあげて、手枕をした姿勢をとります。
最初に、皮膚と音波を出す探触子(プローブ)との間に空気が入らないように、腹部にゼリーを塗ります。プローブを腹部に押し当て、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓など腹部内臓器の断面層の画像をモニターテレビで観察します。検査部位により横向きや座った姿勢で検査を受けます。
検査時間は部位によって異なりますが、通常10分前後です。

検査を受けるときの注意事項

基本的にお腹の中に空気(ガス)が多く存在すると、画像がよく見えません。食事の後では消化管内に空気が発生しやすいため、絶食(朝もしくは昼食抜き)の状態で行ないます。ただし、頸動脈・甲状腺・乳腺の検査は食後でもかまいません。
また、膀胱や子宮、卵巣、前立腺を検査する場合は尿がたまっているほうが詳しく観察できるので、検査前の排尿は我慢するようにしていただきます。
※当院では来院当日に予約無しでも腹部超音波検査が受けられます

頸動脈エコー

当院で、頸動脈エコー検査が受けられます。
最近注目されている頸動脈エコーとは、頸動脈を超音波で観察し、全身の動脈硬化の程度を評価する検査です。脳梗塞や心筋梗塞など動脈硬化に起因する疾患の危険性を評価する指標にする事が出来ます。生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満など)、喫煙、運動不足などに当てはまる方は、頸動脈エコー検査を受けられることをお勧めします。

肛門エコー

肛門の周囲を検索できる良い方法です。膿など肛門周囲にある、外からはわかりにくい病変を簡単に検査できます。(図1)
前準備は不要で、検査時間は5分程度、専用の細い機械を使用します。
膿の検索(図1—図4)、臓器脱の発見から、肛門の血流(血流が低いと切れ痔がなおりにくくなります)(図6,7)、肛門周囲の腫瘍の検索(図8)、などに役立ちます。
特に再発の痔瘻の判定は、elastographyという、組織の硬さがわかる機能も併用し診断します。elastography併用肛門エコーは、再発痔瘻判定の、非常に精度の高い診断手段です(図5)。
図1:深部にある膿瘍。皮膚からでは大きな膿瘍でも、わかりにくい場合がありますがエコーでは一目瞭然です。
エコー01
エコー02
図2:クローン病の深い骨盤直腸窩膿瘍(矢印)です。
骨盤直腸窩膿瘍
図3:深部膿瘍の処置は困難な場合もありますが、エコー下にやることで、針(矢印)を適切な場所に誘導することができ、確実に排膿ができます。
エコー03
図4:ヒュミラとの併用で炎症を収めることができました。
炎症
図5:正常、痔瘻、瘢痕、膿瘍のエコー像の比較。エラストグラフィー硬さのわかる機能を併用することで、4者をより適切に判別できます。硬い組織は青、柔らかい組織は赤で表示されます。瘢痕は固く膿瘍は非常に柔らかい組織でできています。痔瘻はその中間です。
エコー04
図6:血流の悪く肛門を締める力の強い人は裂肛が治りにくい傾向にあります。フラクタル次元という指標を使うことで肛門の血流をエコーで評価できます。
血流の多い肛門

血流の多い肛門

血流の少ない肛門

血流の少ない肛門

図7:肛門を絞める力が強く肛門の血流が多い症例(網掛け部)は、治りにくい傾向にあります。これに対し、早くから適切な治療を施すことで、より早く裂肛を治すことができます。FDは血流の指標で、値が低いと血流が悪いことを表します。
裂肛における内圧・血流と予後の関係
図8:肛門エコーは腫瘍の鑑別にも役に立ちます。 この症例はGISTで非常に硬い(エラストグラフィーで青く)写ります。
症例
一方こちらは同じような内視鏡像ですがエラストグラフィーでは柔らかく(緑)炎症と判断し、結果生検により炎症で、適切に手術が回避され肛門が温存されました。
内視鏡像